頭蓋底腫瘍(特に 海綿静脈洞内とその周囲、頸静脈孔周囲病変)

頭蓋底腫瘍とは

 脳の底面付近、脳幹周囲から発生する腫瘍を頭蓋底腫瘍と呼んでいます。様々な種類の腫瘍があり、髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腫瘍、グロームス腫瘍、類上皮腫、上皮腫、軟骨肉腫/脊索腫、転移性腫瘍、鼻副鼻腔癌などが挙げられます。頭蓋底腫瘍に対する治療は、手術や放射線治療を組み合わせた専門的な治療が必要となります。手術を行う場合は、深い位置にあり周囲に脳神経や内頸動脈等の重要な構造物があるため難易度が高く、専門的で高度な技術が必要となります。また、耳鼻科・頭頸部外科、形成外科などとの合同手術が必要となる事があります。

症 状

 腫瘍の存在する部位により様々な症状を来します。

12本ある脳神経の圧迫

 I、嗅神経:匂いが分からなくなります。II、視神経:視野が欠け視力が低下します。III、動眼神経:ものが二重に見えたり(複視)、目を開けることが出来なくなります。IV、滑車神経:ものが二重に見えるようになります。V、三叉神経:顔面や歯茎の感覚が鈍くなったり、しびれるようになります。VI、外転神経:ものが二重に見えるようになります。VII、顔面神経:顔面が麻痺し、眉毛か下がり、目を閉じることが出来ず、口元が下がってしまいます。VIII、内耳神経:耳の聞こえが悪くなったり、めまいが起きます。IX、舌咽神経:味覚や、のどの奥の感覚が鈍くなり、むせることがあります。X、迷走神経:声が出しにくくなり、かすれ(嗄声、ハスキーボイス)になります。XI、副神経:腕、肩が挙がりにくくなります。XII、舌下神経:舌が出しにくくなります。

脳や脳幹の圧迫

 意識障害、認知機能障害(痴ほう症状)、失語(言葉が出にくくなったり、理解できなくなる)、麻痺、感覚障害(しびれや鈍麻)、等

血管(動脈、静脈)の圧迫

 脳梗塞や脳の腫れが起き、脳や脳幹の圧迫と同様な症状が起きます。

検 査

CT(X線による断層写真)

 脳や頭蓋骨の状態を詳細に確認します。造影剤を用いて脳血管の形状を確認することもできます。

MRI(磁場をもちいた検査)

 腫瘍や脳実質の状態を詳細に確認できます。脳血管の形状や脳の血流に近い評価もできます。

脳血管撮影

 脳血管や腫瘍に行く栄養血管、静脈の流れ等の詳細な情報を得ることが出来ます。

電気生理学的検査

 各神経機能の評価を行います。詳細は別途参照してください。

治 療

 患者さんの年齢、腫瘍の種類、部位により治療方法が異なりますが、一般的には現在起きている症状を改善するために手術による摘出が必要となる事が多いです。基本的には再発の可能性を下げるために全摘出を目指しますが、先に述べた脳神経や血管などの重要構造物の損傷の危険がある場合は、それを回避して部分摘出にとどめます。この際、患者さんの今後の生活、長い人生を見据え、“再発の可能性を下げること”と“重要構造物の損傷の危険性(合併症、新たな症状の出現の可能性)を減らすこと”のバランスを考慮して摘出範囲、量を決めることになります。頭蓋底手術では、その判断が術者の知識や経験により差が出てくる最も重要な点になります。悪性の場合などは残った病変に対して放射線治療等を検討します。