患者さんへ

頭蓋底病変(特に 海綿静脈洞内とその周囲、頸静脈孔周囲病変)で、手術が困難と言われた患者さんや、放射線治療を勧められた患者さんへ

 海綿静脈洞内部や周辺には重要な脳神経(視神経、動眼神経、滑車神経、三叉神経、外転神経)や動脈(内頸動脈)が存在しており、これらを損傷した場合には物が見えにくい(視野視力障害)、物が二重に見える(複視)といった日常生活に支障をきたす障害や、命にかかわる状態(内頸動脈損傷による脳梗塞)となるため、これまではこの部位の手術は危険とされてきました。そのため、多くの場合は手術ができずに放射線治療が選択されていきましたが、この放射線治療では、髄膜種などの腫瘍の増大を抑えることは比較的良好(5-10年で90%程度)ですが、視野視力障害、複視など脳神経機能の改善は30%程度と報告されており、十分とは言えない状況と考えられます。また、正確な頻度は分かっていませんが長期的にみると放射線治療後に病変が悪性に変化(悪性転化)することが知られております。最近では、自身の師匠であるAli Krisht先生(アメリカ、アーカンソー州、ANI(Arkansas Neuroscience Institute))により、この海綿静脈洞内や周囲の手術が比較的安全に行われるようになり、自身も直接指導を受け、この部位の手術を行ってきました。自身の治療方針としては、視野視力障害や複視などの脳神経症状を認める場合には脳神経機能の改善を目指して手術による腫瘍摘出を行っており、症状の改善は80-90%程度と良好な結果を得られています。自身の経験では、放射線治療後にさらに増大した場合や症状が出現してから長時間経過している場合には、症状の改善は難しいと感じております。
 頭蓋底腫瘍、特に髄膜種の場合は場所や構造的に完全に取りきることは難しく再発や再増大は必発であるため、これらをいかにコントロールしてくかが重要であり、長期的な計画を立てた治療方針を考えることが必要と考えております。そのため、放射線治療後の増大では治療が困難となることや、頻度は低いですが予後を悪化させる悪性転化の可能性があることを考慮して、放射線治療をできるだけ後回しにしたいと考えて、年齢や生活環境を考慮した患者さんに合った治療方針を立てております。